詩の中に画があり画の中に詩(うた)がある


2016/7/11 涼州詞(唐詩)

蒲萄美酒夜光杯 欲飲琵琶馬上催 酔臥紗場君莫笑 古来征戦幾人回

 

『葡萄の美酒  夜光の杯 飲まんと欲すれば琵琶 馬上に催す 酔いて紗場に臥す 君笑うこと莫かれ 古来征戦  幾人か回る』~甘美なワインをたたえた夜光のグラス。飲もうとすると、馬上の琵琶の調べが、早く飲みほせとせきたてる。酔っぱらってこの砂原に寝そべっても、諸君、笑ってくれるな。昔から戦に出て、いったい何人が無事に帰ったろうか~(唐詩選/深澤一幸さん著から)   七言絶句。  押韻は「杯・催・回」で上評声十灰

『葡萄の美酒  夜光の杯』 この言葉の美影に捉まってしまいました。さらに琵琶の音色が流れてきて、綺麗な歌だなぁ。と読み進むと一転、厳しい現実が現われて悲哀が歌われます。思わずため息。。ですよね。著者の方は、〈反戦歌〉であると書かれています。 千年以上も前から言葉が時空をワープして反戦を伝えてきます。。。

最近中国の歴史ドラマをみていたら、なんと「夜光の杯」が登場しました。そしてこの詩を詠んだのです。同じ内容の台詞でした。「夜光の杯」は翡翠の盃のことでした。漢詩も面白いですね。


詩中有画画中有詩(詩の中に画があり画の中に詩がある)

中国の文人、王維が称された言葉。そんな文や画を書きたいものです。

右の写真に詩があるとしたら? 小さな物語を考えてみました。。。

扉が開いて一人の女の子が出てきます。手にはノートが一冊。色は赤、大切そうに抱えると落ち葉を除けて椅子に座ります。少し冷えてきた風ですが、気にはなりません。銀杏の落ち葉が秋映えの中で黄金色に輝いて、女の子は暖かな空気に包まれているかのようです。ピンクの頬とキラキラ輝く瞳の周りにはすでにファンタジーの妖精達が取り囲んで、お喋りに夢中なのです。女の子のノートには妖精たちのお話が書き留められていきます。。。秋の日の学び舎の夕映えはそんな少女達をたくさん見てきました。今はもう大人になった少女達。。。夢や冒険はどこに仕舞ったのでしょう?石段の向こうにあるのは記憶の扉なのでしょうか?そっと開けてみたくなりますね  写真/Ⓒportia design


日本の漢字は優れもの?

日本における漢字は音読みと訓読みがあります。(更にひらがな、カタカナ)と、構造的な使用方法は優れものです。文字文化の第一人者の方が、漢字にルビをふる事が子供に良い、とお書きになっています。確かに子供の頃、本にはルビがふってあり、それで言葉を覚えた気がします。ルビで漢字を読み、文章の流れで意味を考え、心躍らせながら先へと進む。。。お話の本を子供が好きになれば、国語の学習は半分済んだ様なものでしょうか?日本も、甲骨(亀の甲羅で占った)文字を起点とする漢字文化圏です。漢字を使う国々の進展に、それぞれ違いはありますが漢字文化は実に興味深いですね。


母国語は何にする?

日本語は実は優れものなのですよ。漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、豊かな表現の出来る言葉ですね。1945年8月以来、英語とその文化に影響を受け続けて来ていますが。その時に、日本語を失う事にならずに済んだのは、当時の日本人の識字率が高かったから。と聞きました。その時、英語圏になっていたら、今、英語学習に苦労しなかったかも???人は道具を使う動物である。と言いますが、人は言葉(文字)を使う動物であるというのも大切な認識ではないでしょうか。さらに、哲学的な思考をする為には母国語を必要とすると言います。深い思考をするためには、深く学んで使いこなせる言語が必要なのだと思います。グローバル化により、使用言語も増えて、何を母国語にするか?などと考える様になるのでしょうか。日本語の構造的な仕組みは子供の思考を鍛えるのに良いと思います日本に住んでいるのなら、中学生まではぜひ国語の勉強を大切にして欲しいですね。


気分の氣 音符は气

気。もとの字は氣に作り、音符は气。气は雲の流れる形で、雲気を言う。气は生命の源泉。おおもととされ、米はその気を養うもとであると言うので、气に米を加えて氣となった。また餼ともかき、氣が餼(おくりもの)のもとの字である。気はすべての活動力の源泉であり、大気(地球を取り巻く空気の全体)元気(活動のみなもととなる気力)として存在し、人は気息(呼吸)することによって生きる。また人にあらわれるものを気質(気立て。気性)気風(集団や同じ地域の人々が共通に持っているとみられる気質)という。-----白川静 常用字解より